当科は下肢静脈瘤の診断、治療、予防に力を入れております
下肢静脈瘤は、足の皮下を走る静脈(大伏在静脈・小伏在静脈)の逆流により静脈うっ滞が生じ、静脈圧上昇により様々な症状を認めます。症状としては、足のだるさ、腫脹やかゆみ、夜間の足の吊り(こむら返り)、皮膚の色素沈着、重症化すると潰瘍形成を来します。また静脈瘤内に血栓形成を来すと強い疼痛と発赤を認め、静脈炎となります。静脈が逆流する原因として、遺伝的素因や立ち仕事従事者などの環境的素因が挙げられ、女性に多くみられ妊娠出産を契機に悪化するといわれています。目立った静脈瘤がないのに下肢の症状が強い場合もあります。普通はその症状で静脈瘤を疑いませんから、実は潜在的な患者様が多い疾患であると思っております。適切な治療を行うと、症状は軽快し、治療後の生活の質も向上しますのでまずはしっかりと診断をつけることが重要です。
治療は下肢の症状の有無が大きなポイントです。症状が無い、もしくは軽度であれば弾性ストッキングを着用し生活習慣の見直しを指導します。
症状があれば、手術適応となります。以前は逆流した静脈を根本的に抜去するストリッピング手術が主流でした。しかし、2011年に血管内焼灼術(カテーテル治療)が保険適応になってから急速に普及し、現在は治療の第1選択となっております。当科では、高周波焼灼機器(Venefit ClosureFast)とレーザー焼灼機器(1470nm Two ring radial fiber ElVeSレーザー焼灼装置)の2つを揃え、症例に応じて使い分けております。
また2019年12月に保険適応となった次世代の治療である血管内塞栓術(グルー治療:VENASEAL CLOSURE SYSTEM)にも対応致します。
2022年はコロナ禍の影響で年間179例と減少しましたが、2021年は302例 、2020年は307例の手術加療を行い、症例数は県内トップクラスです。 当科は①カテーテル手術、②グルー治療、③ストリッピング手術を静脈瘤治療の3本柱として、適応に応じて使い分けていきます。
術中の麻酔は局所麻酔とTLA麻酔(低濃度大量浸潤局所麻酔)で行います。術後の深部静脈血栓症を予防するために術直後から積極的に歩行できる環境を心掛けております。外来の都合上、手術が午後となるため基本は1泊2日入院としておりますが、希望される場合は日帰り手術も可能です。当科は土曜日午前も外来を行っております。足の症状で気になった患者様はお気軽に受診してください。
下肢静脈瘤 治療実績(2022年1月~2022年12月)
- 総数:179例(2021年:302例)
- うっ滞性潰瘍:32例
- 血管内焼灼術(カテーテル):123例
- 血管内塞栓術(グルー):6例
- ストリッピング術:48例
- 硬化療法:7例